誇張
最近読んだ書籍から。 著者の紹介にこんな文章を見つけました。”10万本の科学論文を読破、600人の著名人とインタビュー”。
すごいなあと思いますがエンジニアなのですぐ計算してみました。仮にこの人物、とんでもない速読法をマスターしていて且つ読んだものはすぐ理解できる頭脳があるとします。10万本もあると日本語だけではなさそうですが英文も日本語も同じ速さで読めるとする。一本10分としで百万分です。16667時間、666日(24時間で割る)。仮に一日10時間その作業だけにずっと当て続けられたとして1667日です。一年全く休みなしでも4.6年かかります。こうやって計算していくとだんだんその履歴に信憑性を失っていく。しかもその間600人の著名人と会っている。著名人と会うにはアポ、準備、会った後にする作業と沢山のことがあります。年50人と会おうと思うとそれだけで相当な時間が必要です。50人アポ取れるのはよほどな人物だけだと思います。
さてそこで、 本は著者はいますが出版社に編集を担当する人がいます。著者略歴はその編集担当者が書いたに違いない。私はおそらく著者は”科学論文10万本くらい検索したか、目を通してその中から重要な論文を精読したかな?”とか、著名人とインタビューしたりその人の講演に行ったり、ビデオを見たかな~といったことを編集者に話したと思うのです。
間違ってはいないですが意味合いは全然違いますね。読破 と 目を通す は人によっては雲泥の差があってとらえられますから。目を通すのなら1分もかかりません。
何も悪い行為だと言っているのではないです。
以前書きましたが 人生は
セールス である。
セールスには誇張は付き物。 そこで、
履歴書について書きました。就職には必要なものです。私は人生にとって、少なくとも仕事という面からは就職だけでなく履歴書は重要だと思っています。
履歴書は最初の関門であると書いています。見知らぬあなたを履歴書を見て判断するのです。日本では写真を添付することが多いですがUSAでは写真は添付しません(写真選考させないため)。書かれた内容から応募してきた人物を推し量るのですから履歴書に誇張はつきものです。
ちょっとしたことを任せられたらResponsibile to, Lead, Own といった言葉を使う、実際何も設計していないのですが設計ファイルを管理したという人と会いましたが履歴書には Ownと書いてあった。てっきり設計者かと思ったらファイル管理者だったとか。どう考えてもわずか2年程度の職歴(その会社での)でそこまでできるの?と思うようなことが書いてあったりしますが少しでも関わったらそれを追加として履歴書に書いてあったりもします。
真っ正直に履歴書を書いても良いんですが履歴書の役割は事就職に関しては最初の関門である書類選考に残ることです。応募してくる沢山の履歴書の中から残るにはそれなりのセールスは必要なのです。
セールスとはこの場合自分を売ること。セールスには誇張は付き物だと書きました。
人生のための履歴書は正直であることは言うまでもないですよ。これは自分のために書きますから。
人をみる目は重要だとも書きました。
人生はセールスなのです。誇張があります。ですから立場を変えるなら(買う側)、今度は見抜く能力は必要です。
シリコンバレー、日本では誇張されすぎているように思います(いい意味で)。また中国も誇張されすぎ(こちらは悪い意味で)。
人から聞いたこと、読んだこと、見たことなどを吟味、検証することはとても重要です。一番いけないのはそのまま鵜呑みにすること。
誇張の一番な例は”儲け話”です。 赤の他人があなたに儲け話を持ってくるわけがない。その人物はそんなあなたから儲けようとしているだけです。 不動産”投資物件ですよ”というのは ”あなたが買ってくれたら私にがっぽりコミッションが入る”と言っているのと同じです。 不動産業者は本当の投資物件は自分で持ってます。売ったりしません。
はたから見て良いなあと思った会社、入ってみたらがっかりと言うこともあります。 全然宣伝しないけど美味しい料理、内容のある本、すごい人物に出会うこともあります。
それらを見分けるそんな経験を積みたいですね。
経験を積んだらと言いますが漠然としては同じことを繰り返すだけになります。だからよく考える、これはとても重要なのです。Thinking Fast & Slow という本を紹介しました。
マーケティングの仕事を10年ほどしてきました。私の扱った製品、技術には3社競合相手がいました。顧客ミーティング、特に最初のミーティングでは資料を基に製品を紹介しますが決まって出てくるのが競合との比較です。顧客側は既に競合相手と会っていることもありあちらからの話は聞いています。データも持っていることが多い。競合する会社のデータは断片的にオンラインなどで散見できることもありますが通常NDAを伴っており出ては来ません。競合より、良い悪いがわかるだけです。
データをどう抽出するかまとめるかは各社やり方があります。いわゆる第三者的な機関もあるのですがこれとて完全に中立ではないのです。これら機関を運営するお金はメンバー企業がだすのですがそうなるとどれだけメンバー企業がお金をだしているかで大きな影響力を持つようになります。
エンジニアからマーケティングに移って間もないころは、やはりエンジニア気質がまだ残っており出すデータ、真っ当だった。でもいくつか顧客を回るうちにどうも変だと気付いた。 データには取り方があるようにまとめ方もあるのです。あるミーティングの準備の際にまとめ方を変えてみた。 そしたら突然自分たちのデータが一番良く”見える”ようになった。その時一緒に行ったセールスが”何かあったのか?”(つまり製品の改善)と聞いてきました。 いや、ちょっと見せ方を変えただけだ。。 BINGOと彼は言いました。 それいこうその資料を使うようになりました。履歴書みたいなものですね。でも、じっくり考えたらそれらのデータを同じ条件で同時に達成できるわけじゃあないのです。エンジニアが席に戻ってじっくり考えたらわかりますがミーティングの場でそこまでしませんし出席していたエンジニアも席に戻れば自分の仕事に戻りますから資料はそのまま。で次のステップというのはマネージャが判断するのがほとんどですから選択される。 実際の製品評価は面接のようなもの。そこでいい結果を出せばいいのです。書類選考で落ちた競合が戻ってくるのは面接に落ちた時だけですからその間(数か月)は時間があることになります。評価中はほとんどエンジニアと同じようにサポートしましたから評価結果としての不採用はまれでした。つまり最初の書類選考に残れるかどうか。。。もっとも大どんでん返しはありましたよ(これはほとんど人的関係。上位のマネージャが競合と懇意だったり別案件と一緒になったりとか、色々)。
そうこうするうちに競合はどんなことをやっているのかもわかるようになりましたからその対策方法もわかってきました。皆色々考えてきます。嘘とわかるようなことはしません(嘘ははがれると大変ですから)。しかしながら誇張や良く見えるような細工はします。よくあるでしょう?小さな但し書き。企業の年間レポートなども但し書きを注意深く読まないと実態は把握できないと聞いたことがあります。但し書きは別に書いてあることがほとんどです。一緒に書いてあるとついつい読んでしまいます。読んでほしくないことは但し書きに書いておく。特に表など。ミーティングで使った資料を使って社内のミーティング用の資料を作ったことがありませんか?そんな場合得てしてコピー&ペースト。2つのベンダーの資料から引き抜いてきたテーブルをそのままコピペする。但し書きまでコピペすることはあまりありません。でも一緒にされる。そうするとテーブルの中の数字だけが踊り始めるのです。一方が断然良く見えたりする。そもそもの条件などが違っているんですがね。そんな中にでもベンダーとしては生き残るためにはどうしたらいいか、やはりマーケティングとして考えるところです。嘘ではないが誇張を入れそして見栄えをよくする。こんなことは当たり前なことなのです。
家を買うような場合を考えてもわかりますね。見に行くととても良く見えます。家具やライトを適切にセットしてあるからですが上手にできることはとても重要なのです。
だからこそ、本質を見抜ける経験と勉強は重要なのです。疑ってみるわけじゃないですが検証してみる。先ほどの10万本の学術論文。すごいなあと思うか、ちょっとまてよ、著者の経歴を見るとどこか矛盾が無いだろうか?実際はどういうことなのか(読破の意味が自分の考えていることと経歴の言っていることには乖離があるのかもしれないとか)と検証してみるか。そういったことを日頃から心掛けておくと役立つはずです。
技術分野であれば自己の経験や勉強と照らし合わせて”本当かな?”と、どんな条件なのだろうか?と言ったことをちょっと考えてみる、そして疑いがあれば質問する。一度台湾でミーティングをした折、非常に優秀なエンジニアに根掘り葉掘り質問されました。質問に答えながら”雇いたい”と思う程でした。
見る目を持つことは重要。経験がものをいうのか? いえいえ、同じことを漠然としてやっていたのではだめです。
経験も同じ失敗を100回したら同じ失敗を100回したというつまらない経験だけになり価値はほとんどありません。経験を積むというのはその経験から何かを学び次に活かせるかなのです。ですから3年の経験でも20年もやってきた人よりよほど良い能力、実績を持つことも多々あるのです。私は経験だけをやたらと言う人はあまり信を置いていません。以前書きましたが7回転んで8回同じように起き上がったのでは8回目もやはり転びます。経験にはまったく繋がっていないわけです。転んだ、起きた、また転んだ、次は違った置き方をしないと。本質を見る目を持つのもこれと似ていると思います。
ビンテージの時計は難しい。知らない頃EBAYで買ったのにはいろいろな時計からパーツを集めてきて作ったものもありました。詳しい人が教えてくれました。このROLEXは全部オリジナルだとかで今はかなり値が張るようです。
料理は観て楽しみそして味わうとか。 見栄えはとても重要ですが、食べてみたらまずいこともありますね。
建物などもそう。見栄えと機能性は常に一致するとは限らない。見栄えばかりよくて使えないオフィスというのも沢山あります。