学歴

私は日本の大学で修士課程を修了(80年代中旬)。もうかれこれ40年近く前。あの当時博士課程に行く学生は少なかった。私は色々な事情があり最初から博士課程は検討もしていなかったですが同窓(同級生たち)は博士まで行くと職がなくなるからと言ってました。会社が博士を欲していないと信じられていた。

さて今私が働いている部署、私以外で5人いるのですが私を除くとみなPh.D (博士)です。以前いたベンチャー企業も博士率は高くエンジニアだけで考えると20%以上は博士だったでしょう。今数えてみても20人以上すぐ名前が出てきます(エンジニアは100人程度だったかな)。

日本では博士イコール研究者といったように思われがちですが今一緒に働いている同僚、ソフトウエアの開発エンジニアです。確かにある種の数学(線形代数)などに詳しかったりしますがそれを除けば私と同じレベルのエンジニアでやってることは私がハードを担当して彼がソフトの担当をする。なんだ、博士課程まで行ったのに研究をしないでエンジニアをしているのか。。。と思う方もいるかもしれないですね。私も30年ほど前USAに来た当時はそんなことを思ったものです。エンジニアをするんだったらPh.Dにまで進まなくったってできるじゃない?とね。今はそんな考えは全くないですよ。勉強(学業)と仕事は分けて考えるようになったからです。

とはいってもある種の学歴は役立ちます。その双璧がPh.DとMBA。 私の元上司と今の上司はどちらも修了していたりする。二人ともとても頭が切れる。元上司は今大きな会社でSenior VP(会社のトップ5ないに入る)で大きなR&Dグループを抱えています。日本と比較すると世界はもっと学歴社会です。

30代前半、スイスにあるIBMの研究所で働きたい時期がありました。以前書いたのですがスイスに漠然とあこがれていたからですが、ここに入るにはPh.Dは絶対条件。その当時働いていたチームにはBostonにある大学の教授がアドバイザーとして参加していましたが彼にもPh.Dを薦められました。彼の研究室に入っていたら今頃は全然違った人生になっていましたね。

その後、当時のATT ベル研究所で働ける機会を得たことがあります。トランジスタの発明で知られたペンシルバニア、アレンタウンという町にあるのですがとにかく田舎なのです。田舎すぎて。。。といったらニュージャージー、ホルムデールという町にもチームの半分がいるからと見に行きましたが黒い大きなビルでしたがやっぱりすごい田舎。バスと電車でNYCまで出れるよ、と言ってくれましたが働いていた会社がカリフォルニアのオフィスへの転属をオファーしてくれたのでそっちを取ってしまった。ベルに入っていたら今頃はPh.Dでどこかで教鞭をとっていることでしょう。ベル研と言ったら少なくともあの当時は権威がありましたからね。いまもでしょうか?囲碁将棋倶楽部があるからとそこもにも行きました。”将棋を知っているか?”と聞かれ知っていると言ったら将棋をしながら色々とは研究所のことを教えてくれました。のんびりしたことろだった。。。帰り(夕刻)外にでたら、建物そばに池(湖)がありましたが水鳥とカラスが沢山いたのをよく覚えています。正しく研究機関だったのですね。

ビジネスの世界でしたらMBAでしょうけれど、こちらは”どの大学?”というのも重要になるようです。特に今は本当に沢山の聞いたこともないような大学もMBAプログラムを出しています。授業料がとても高いので”利益率”が良いんだろうなと勘繰ったりするのですが、この歳になってもまだ大学からのダイレクトメイルを受け取ることもあります。

ただ、学位は必須じゃないですよ。友人でIntelの Sr. Fellow をしているのは大学院もでていません。私の元上司(既に亡くなった)の学部卒でしたがStandford大学の大学院生(博士課程)を教えていました。 学業と仕事は分けて考えると当たり前ですね。仕事からくる経験、学位にはなりませんが知識、実力はあるわけです。ただ学位と違いわかりにくい。友人のようにIntelの Sr. Fellowにでもなっていれば良く知られた会社の良く知られたタイトルですから良いのですがすごい実力があっても小さな会社でStaff Engineerというタイトルだった場合どれほどなのかすぐにはわからない。そんな時名刺にPh.Dとあると、ああ、学業を修めたのね、とわかりやすい。銀座辺りのクラブでもすぐわかりますよ。名刺に XXXX博士と書いてあったらホステスさん皆さん”賢い人”だと思ってくれますよ。

今学校に戻りたいか? 家人には言っているのですが引退したら大学に戻ってPh.Dを取ると。”好きにして”となるのですが、理由は大学で教えたい。今や教えるには、たとえ講師でも、たとえ40年近い経験があっても学位が先ということなようなのです。それに40年来の思い、IBMのスイスにある研究所にも行ってみたいですから。

昨年Zurichに行った折もその建物外観をみて、ここに来たかったんだと当時を思い出していました。

チューリッヒ (スイス)写真はETH Zurich. 町の中心にある丘にありました。 山の上から撮った写真では右下方向に白い建物が見えますがこれが確かIBMのZurich研究所です。