ハイテク(シリコンとソフトウエア)関連にずっと従事しているので出張は基本的にテクノロジー産業のある地域となります。これまでに訪れたところにはもちろんイスラエルもあります。中東諸国のひとつですから宗教が国家、日々の生活にとても深く入り込んでいます。イスラエルでは土曜日は電車、バスといった公共交通機関はストップします。土曜が安息日だからです。タクシーは動いているし空港も開いており飛行機の発着はもちろん通常通りですが電車、バスは動いていない。。。 土曜日が休みで日曜日は通常通り会社も学校もやっています。金曜日がやすみだったかな?ちょっと記憶があやふやですが私はいつも金曜日の夕刻に到着する便でイスラエルに行っておりました。土曜日を休みにして(観光する)日曜日から働くためですが、金曜日の夜に到着するということは、ご存じの方もあるかと思いますがユダヤ人は金曜の日没から土曜の日没まで火を使いません。つまりホテルにチェックインしても食べることができるのはサラダとかコールドサンド程度になってしまいます。もちろん土曜の朝食も全く期待することはできません。 が、困るか?というと全くなんですよ。
というのはユダヤ教は土曜日が安息日ですが、キリスト教徒は日曜日そしてイスラムは金曜日
つまりイスラム系かキリスト系のレストランに行けば金曜でも土曜でも食事ができるんです。よく考えたものですね。でも国全体としてはユダヤ教にのっとるようで電車、バスは止まるんですね。
さてそんなイスラエルですがご存じかとは思いますがハイテク産業も盛んです。USAの大会社、例えばIntelですがハイファ等に大きなビルをもっています。ハイファはハイテク産業の地でその一帯にはUSのよく知られた会社が軒並みビルを構えています。その一帯にある顧客を訪問するだけで2,3日はかかります。USAとイスラエルの結びつきを考えるとUS系の企業が多いのはわかりますがイスラエルにも中国系企業は進出していますよ。この場合買収に伴うケースが主だと思います。
買収と書きましたがイスラエルの企業は多くの場合資金源に限りがあります。イスラエルの企業とここで言っているのはイスラエルに本社、いやイスラエル人が始めた企業という意味です。ほとんどがいわゆるベンチャーになるのですがシリコンバレーとはことなり資金が潤沢にあることはまれです。またイスラエルの証券取引所はUSAにあるナスダック等と比較できるわけもないですからこれらの会社は設立当初からIPOを目指しているわけでもありません。彼らの目標は彼らのアイデアをプロトタイプまで完成させてお客に売り込む(最終製品化のための資金を得るため)もしくは大会社に会社そのものを売り込む(吸収合併)です。資金が底をつく前にプロトタイプを完成させる必要があるため一日13,14時間は働くというのは全く普通です。土曜が安息日なのは国のことであって彼ら自身が安息にしているわけではなくなんらかの形で働いているので週7日働いていることになります。私は日本人は働きすぎだということを聞くたびに”本当かな?”と疑っています。私自身を考えてももっと働いている。私は平均して週60時間程度(土、日も結局働いている)は働いています。一日平均11時間程度、シリコンバレーでは普通なことです。アメリカは有給になるいわゆる祝日は高々10日です。日本は祝日は基本休みですがUSAは国の休みと企業の休みは一致しません。バケーションで1か月も休んでいるだろうと思うかもしれませんがそれはEU諸国のことであり私の周りでの夏の平均休暇は一週間ていど(つまり5日)です。今年はCOVID19もあり私の同僚は上司も含め誰一人休暇を取っていないのでいわば働きづめ。中国やイスラエルはもっと働くといって過言ではありません。
そんなイスラエルですから顧客からよくお願いされたのが”出来高”支払い契約です。契約上は最初の支払いが極端に少ないが製品としてはフル装備の提供を求められる。成功したらプレミアムを付けて残りを支払う、という契約です。 製品の割引後の価格が3千万円として最初の支払いは300万円程度くらいです。プレミアムとして10%つけるとして成功すれば300万円多くなりますが最初の支払いが極端に少ないのがリスクになります。現地にいる同僚はそれでも契約を取ろうとします。そこで私が出かけて行ったわけです。私の出張目的はその顧客を技術的に評価することでした。技術そのものとエンジニアの技量を評価するのです。ほとんどただで製品を提供するわけなのでこちらも賭けになりますからね。結果ミーティングは時には数日になることもあります。実際ある会社ではミーティングの半分くらいはラボで一緒になってソフトウエア開発をした経験もあります。プロトタイプが置いてあるのですがソフトの開発途中でその技術がどの程度のものか判断するには実機を稼働させる以外に方法がなく(パワーポイントの資料なんて誰でも作れますからね)開発を手伝ったわけです。その会社とは契約をしました。その後軍事予算をもらえたということでプレミアムを付けての支払いにまで至ったのでこれは成功例でうまくいかない例のほうが圧倒的に多かった。こんなスタートアップを中国の企業がいくつも買収しています。そのいくつかの企業にも行きましたが買収後中国からたくさんのエンジニアとマネージメントを送り込みオフィスもすっかり中国色を深めていましたがコアとなる元ののエンジニアはそのまま在籍して製品の最終設計をやっていました。最終設計が終わったら退社してまた新しい会社を作ると言っておりました。 最終製品を関せさせるまで在籍することが条件で買収されたので辞めれない。その買収資金で次の会社を興す予定だということでした。
さて振り返って日本ですが実はスタートアップと言われる企業を訪れた経験は一度もありません。そんな会社がないのかな~と思っていたのですが日本にいる同僚に聞いてみると彼らはそういった会社にあまり行きたがらない。どちらかというと大会社かもしくは国家予算がついているような会社を優先したいということで、限られた時間をかけるのならそんな会社となるようなのです。 スタートアップ企業がないわけではなく。これはしかしもったいない、双方にとって。まず顧客サイドのたつと、言ってみれば相手にされていないということになりますがそうだな、例えて言えばビルを建設するのに大きなクレーン車を使うことができず小さなクレーン車で頑張っている(でも小さなクレーン車だけでは大きなビルを作るのは時間がかかる)。結果、せっかくのアイデアがタイムリーに実を結ばず、あとから出てきた同じようなアイデアを考え出したUSA、’中国の会社の後塵を踏む結果となる。ベンダー(私の立場)で見るといわゆる将来有望なお客を失う結果となりうる。実際USAではサンディエゴにあるとても小さな会社と取引したことがあります。最初の取引は200万円程度だったのですがその時担当だったセールスがこの会社は絶対成功するとかなり無理な取引を強引にねじ込んだのですが(割引率90%だった)、今その会社はナスダックに上場しており毎年数千万円の契約を継続しています。くだんのセールスにとってはもう計算できる顧客になっているんですね。
ところでコーシャという言葉聞いたことがありますか? ユダヤ系の人がとても気にすることなのですが料理、食材に関するある種の規定とでも思えば良いのでしょうが、塩ひとつとってもそれがコーシャに準ずるかどうかが問題になることがあります。アメリカで食品を購入する際ラベルを見るとコーシャに準ずるとかコーシャに準じたことを示したマークを見つけることができます。ずっとはるか以前ユダヤ人の同僚(当時彼は私の部下でした)と日本出張をしたことがありますが彼はコーシャに準じた食事しかしないことが東京について知り、本当奔走しました。日本であの当時コーシャなんて言っても誰もわからなかった。説明してくれましたがそれでもあまりよくわかりませんでしたが確か明治屋だったと思いますがそこに連れて行っていわゆる輸入品のコーナーで色々と二人でみるとコーシャとかそのシンボル(丸にU)を見つけそれがついているポテトチップなどを幾つかかった。 普通のレストランでは切っていない丸っこのトマトを3,4個だしてもらったような経験もあります。ベジタリアンなんですか?と質問を受けたように記憶しますがトマトをコーシャに乗っ取らないまな板、包丁で切ってしまうともうコーシャでなるなるので単に水であらっておさらに盛ってもらう以外なかったのです。それに明治屋でかったコーシャの塩を振りかけて食べていました。今は東京あたりだとコーシャ料理をだすようなレストランがあるのかもしれないですが調べてはいません。先ほど安息日と書きましたが彼は金曜の日没から土曜の日没までたとえ働くにしても家にいるというのを守っていたのですがこちらの手違いで帰国のフライトが金曜日になりすったもんだした経験もあります。USAに向かうフライトは普通夕方に成田を出るんです。間違いの発端は彼はどうしてもサンフランシスコに金曜日の午前中に着きたいと言っていたのです。理由はそうすることで日没までに自宅に戻れるからです。 そこを強調していたのでそれに向けてフライトを手配してあったのですが時差があるでしょう?そうするには日本を金曜に出ることになるのですが午後遅くだったわけです。どう解決したか? 直行便をあきらめさせました。木曜真夜中(木曜日の予定をこなしてそれから空港に行く)に飛び経由先を経てサンフランシスコに金曜の午前遅くに到着するように組みなおしたのですがキャンセルの効かないチケットで片道というのは実はとても高くつくのですがチケットを買いなおしてとかなりすったもんだしました。がちがちのユダヤ教徒だな~と思われるかもしれませんが全然普通なエンジニアでしたが自分が守ることは守るというそれだけなんだと言っておりました。ちなみに今でも良き友人でテルアビブに帰ってしましましたが私がイスラエルに行った折には夕食を共にしています。コーシャの問題はないなというといつも苦笑いをしていますがあの件ではずいぶんとこちらも学びました。 どんなにグローバル化が進もうとも歴史を積みかさせねてきた社会習慣などはそんな簡単に均一になるものではないということを。
写真はテルアビブです。地中海の水はとても暖かでヨーロッパじゅうから観光客が集まってくると聞きました。市の中心はモダンです。顧客のオフィスからの展望はとても良かった。